中学1年のときに、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」を見て、格闘技に目覚めました。最初は単に「かっこよさ」への憧れでした。しかし、映画雑誌や本などを読み進めるうちに、「素顔のブルース・リー」は、書物を愛する、思慮深い人間だということが分かり、ますます傾倒しました。
高校生のときに、漫画の「空手バカ一代」に出会いました。親元から離れて大学に通い、空手に専念することを夢見て、受験勉強に励みました。「空手をやる!」というモチベーションがなければ、勉強も中途半端で、医者にもなっていなかったかもしれません。
 大学1年のときに、極真空手に入門し、本格的に空手を始めました。学生時代の最後と、医者になってからの数年は、空手道場から遠ざかっていましたが、32歳のときに、偶然にも、極真空手の初代世界チャンピオンの佐藤勝昭氏と出会い、再び空手を始めることになります。「極真会館」から「佐藤塾」に修行の場を移しましたが、今も空手の稽古は続けています。
 学生時代に、柔道部の部長だった同級生から柔道を教わり、後に柔道にものめりこむことになります。医者になってからの数年は、どちらかというと柔道に力を入れていて、参段をいただいております。
 私の格闘技に対する姿勢は、2000年に出版した「クロスオーバートレーニング・新格闘教書」の中の、イラストに集約されると思います。その部分を、ここに転記したいと思います。

 常々、人間の才能で外から見える部分は、全体の1/10程度ではないかと思っていました。「10」の努力をして、そのうちの「1」の部分が、きらりと光る才能として、外から評価されるのです。水面から顔を出す、氷山のようなものだと考えています。
 日本には古くから、「一生懸命」が「一所懸命」であったという認識がありました。いろいろなことに手を出すことを、「器用貧乏」と揶揄する風潮もあります。しかし、一つのことにばかり没頭することは、氷山の頂点ばかりを伸ばそうとするのに似て、確かに鋭い山になるかもしれませんが、その努力の9/10は水の中に沈んでしまいますし、ときに、「スポーツ障害」や「燃え尽き症候群」を生み出してしまうことにもなりかねません。
 そこで、ときには違う競技のトレーニングを経験してみることをお勧めします。柔道の強化合宿などで、強化選手たちがレスリングや相撲に取り組むことがあります。つまり、氷山の底の方向を伸ばすように努力することにより、マンネリを打破し、さまざまな動きにも対応できる、幅広い身体能力を身につけることができます。別の競技を経験することにより、その努力の1/10は、本来の競技に返ってきてくれます。何よりも、精神的に明るくなれることでしょう。

 残念ながら、後にこの出版社は倒産し、この本を手に入れることは困難です。
 自分自身が、武道やトレーニングにかかわってきました。その経験や知識は、微々たるものかもしれませんが、その中でもできるだけ多くのことを皆様にお伝えしていきたいと思います。

 

 足には「土踏まず」があり、横から見るとアーチ状の構造になっています。
このアーチを弓矢の弓にたとえると、弓を両端で引っ張っている「弓の弦」にあたるものが、足底筋および足底筋膜です。
足にかかる体重は、このアーチを潰そうとする方向に働きます。足底筋膜を引っ張ることにより、この筋膜自体に、あるいは筋膜のかかとの骨への付着部に、炎症を起こします。

 走った後に、この部分に痛みがあるようなら、アイシングを行います。アイシングは、練習直後から開始するのがいいでしょう。熱感や痛みが強いようなら、入浴はさっと汗を流す程度にして、入浴後もアイシングを継続します。アイシングは必ず氷と水とが混在する状態、つまり「0℃」のものを使用してください。
冷凍庫から出したばかりの氷は、ときにマイナス20℃にもなっていて、凍傷になってしまう可能性があります。

 予防としては、普段から入念にストレッチングをすることです。特に足関節周辺をしっかりと・・・。
 後は靴の注意です。それぞれの足の形に応じた「アーチサポート」という装具を装着するといい場合もあります。

 

腰椎の下部および仙骨の、骨の間から出ている神経の枝が、いったん集まり、一本の太い神経、「坐骨神経」となります。この神経の走行に沿って、特に殿部から大腿の後面あたりにかけて感じるような痛みを、「坐骨神経痛」といいます。

 原因となる主な疾患としては、「腰椎椎間板ヘルニア」、「変形性腰椎症」があります。
「腰椎椎間板ヘルニア」とは、骨と骨との間のクッションである椎間板が何らかの原因によってつぶれて、後方を走る神経の枝を圧迫するものです。「変形性腰椎症」とは、椎間板の老化により、その上下の腰椎の縁が鋭く変形したり、骨と骨を結ぶ靭帯が厚くなったりして、神経を圧迫するものです。
若年のアスリートには「椎間板ヘルニア」が多く、中高年以降になると、「変形性腰椎症」の要因を考えなければいけません。
「変形性」とは、要するに「老化」のことです。

 ランニングでの上下動により、椎間板には圧迫されるストレスが繰り返し加わります。
これによって、坐骨神経痛の症状を悪化させてしまうことがあります。
 治療は、まずは安静です。症状に応じて、消炎鎮痛剤や、ビタミン剤などを用います。
慢性的に痛みが続くような場合には、腰椎牽引などの理学療法を行うこともあります。

 腰を傷めた人が、よくコルセットを巻きます。これは腹圧を高めることにより、腰椎にかかる負担を軽くしてやろうというものです。予防としては、腹筋や背筋をバランスよく鍛えることが重要です。
「筋肉を鍛えて、自前のコルセットをつくる」ぐらいのつもりで、がんばってください。

 

 剣道を約20年ぶりに始めたという女性から、「足の甲が痛くなったけれど、剣 道を続けたいし、どうしたらいいか」という質問を受けました。中国の医師資格を 持っているという理学療法士に鍼治療を受け、さらに「靴を履いて剣道をするように」 というアドバイスを受けたそうですが、どうも剣道というものを理解していただけて ないようだとのことで、私に連絡されたのだそうです。

 ランニング動作や、踏み込みの動作を繰り返していると、中足骨に負担がかかります。
この負担が強くなると、骨の膜に炎症を起こす「疲労性骨膜炎」に、さらには「疲労骨折」にいたることもあります。

 骨は、「壊されては修復され」、「壊されては修復され」、の繰り返しで、常に 新しい骨に生まれ変わっているものですが、負担が大きすぎて、壊される量が修復される能力を上回ってしまうと、少しずつ骨の破壊が進行していきます。これが重なったものが、疲労骨折です。
疲労骨折を防ぐためには、破壊される量を抑えるか、修復される速度を速めるかのどちらかしかありません。

 カルシウムを2倍摂取したからと言って、また何かの薬を使ったからと言って、骨の修復速度が2倍や3倍になることはありません。
とすると、疲労骨折を効果的に防ぐためには、破壊される速度を1/2、1/3に低下させることを考えるべきでしょう。

 衝撃を軽くするために、次のようなことがあげられます。
何と言っても、
(1)衝撃を受ける回数を少なくすることが必要です。その他、
(2)衝撃の強さを弱めること、
(3) 衝撃によって生じる骨の歪みが最小限になること、などが考えられるでしょう。

 (1)のために、練習時間を短くすること、練習の総量を調整することが必要です。
 (2)のために、肥満があるようなら減量を考えるべきでしょう。クッションのある靴をはくこともいいのかもしれませんが、なかなか剣道で靴履きというのも不自然なものです。土踏まずを持ち上げる、アーチサポートタイプの足底板と、それを固定する足サポーターの組み合わせがいいのかもしれませんが、木の床でサポーターが滑りやすかったりして、なかなか使っていただけないのが現状です。

 (3)のためには、やはりテクニックでしょう。同じ体重の人が、同じ高さから飛び降りても、一方の人がドスンと着地したのに対して、もう一方の人がふわっと着地できるかの違いと考えていいでしょう。
前に踏み込む際に、ドタバタと移動するのではなく、すっと踵から着地して、最後には足の親指を使って床を蹴りだす意識で体重移動させます。負担に負けないためのトレーニングとして、足の下に敷いたタオルを足の指でたぐり寄せる「towel gather」といった方法が勧められます。

 また外反膝(X脚)や内反膝(O脚)があるような場合は、それぞれ足底の内 側、外側に負担がかかってしまいます。足だけの治療で効果がない場合には、テーピン
グなど、膝への治療も考慮されるべきでしょう。

 

 このシーズン、幼稚園、小学校、または地域の運動会ではご父兄が競技に参加し、かっこいい見せ場を作るという、なんとも微笑ましい光景が見られます。
 日ごろお仕事に追われ運動をあまりされていないお父さんお母さんの頭には、学生のころの颯爽と走れる自分が描かれ、お子さんの手前、かっこいい所を見せようとはりきってしまいます。
しかし、年齢が上がるにつれ、筋肉は柔軟性が減り、頭で描いているような走りができなくなってしまっているのです。
 運動会でご父兄が転ぶところを見たことはありませんか? これがまさに頭とからだが結びつかなかったその光景なのです。
 そこでアキレス腱を痛めてしまったり、肉離れをしてしまうとお子さんにかっこいい姿を見せるチャンスが台無しになってしまいます。頭で描くようにからだが動かない・・・。
そこでかっこよく見せるお手伝いを!

1.まず、入念にストレッチをします。 
2.運動会当日までに最低1週間走る練習をします。
3.はじめはジョギング程度、ダッシュの30%くらいで。
  その次は50%くらいで・・・と、だんだんペースをあげていく。
4.欲張らず少しの距離から 
5.前日は睡眠をよくとる

 最近では父兄が参加する競技種目の見直しが行われていますが、参加する場合は充分気をつけてください。

 

9月20日 長坂
 どんなスポーツ選手も、またスポーツをしたことがないという人でも、「私は生まれてこの方、足をひねったことがありません」という人はいないのではないでしょうか。
それほど、足首の捻挫はありふれたケガの一つです。
 足首の捻挫の多くは、着地の際などに足が内側を向いてしまったところに体重がかかり、足関節の外側の靭帯や関節包などに損傷を受けた状態です。

 捻挫すると、足首の関節に痛みと腫れが起こります。
足をひねると痛みを感じる程度の場合はまだ軽症ですが、重症になると、足関節を曲げ伸ばしするだけでも痛みが生じ、体重をかけることも困難になります。
このような場合には、骨と骨とを結ぶ靭帯が断裂してしまっている可能性もあるので、早めに病院で診てもらってください。

 捻挫の治療の原則は安静です。もんだりマッサージをするのは逆効果。圧迫包帯で足首を固定し、患部にはアイシングをして腫れが引くのを待ちます。

痛みが取れるまでは、足関節に負担がかかる動作は避けましょう。
 また、治癒が不完全で、靭帯がゆるんでしまったような場合、いわゆる「捻挫ぐせ」がついてしまいます。
再発防止のためには、足先にチューブを巻き、足を外側に開くようなトレーニングがお勧めです。
「腓骨筋」という、足先が内側に向くのをおさえるような筋肉を鍛えましょう。


今回は、運動前のウォーミングアップについて、書かせていただきます。

<ウォーミングアップ@ 体温の上昇>
 まず一番初めに、全身の体温を上昇させるような体操、例えばウォーキングや、ごく軽いジョギングなどを行いましょう。
筋肉・関節には、温度の上昇で、柔軟性・動きやすさが向上する性質があります。
身体を温めて、それらの性質を上手く引き出してから、ストレッチングを行ったほうが、効率よく行えます。

体温が上昇していないと、筋肉・関節の動きが悪く、この状態でグイグイと無理にストレッチを行うと、効果が薄いばかりか、筋肉を傷つける原因にもなりかねません。
軽い有酸素運動を行い、少し汗ばむ程度に体温を上げておくようにしましょう。

<ウォーミングアップA 筋肉のストレッチング>
 適度に体温が上がり、筋肉を伸ばす準備が出来たら、次は各部のストレッチングを行います。
それぞれの筋肉が、正しくストレッチされるように、伸ばしたい筋肉がどこなのかを、しっかり意識させながら、柔軟体操を行います。
この際も、最初は反動をつけたりせずに、じわじわと筋肉を伸ばしていきます。
筋肉に張りを感じる程度まで伸ばし、そのまま30秒程度、筋肉を伸ばしていきましょう。
ウォーミングアップを正しく行うと、意外と時間がかかってしまいます。面倒でさっとしか行わない方もいらっしゃると思います。しかし、不必要なケガを予防するためにも、よいパフォーマンスを発揮するためにも、ストレッチは必要なことです。

ぜひ、ご自分のペースで、少しずつウォーミングアップをするように、心掛けてください。

2008年10月 リハビリ室 野村功

 

 スポーツで起こる膝のケガは、ラグビーでタックルされたり、柔道で大外刈りを受けたり、空手でローキックを受けたり、外からの大きな力が加わって起こるのが半分ぐらいでしょうか。
その他は、自分の動きの中で膝をひねってしまうというケースが半分ぐらいあるのではないかという印象を持っています。

 膝をひねることの多いのは、競技でいえば、バスケットボールでしょう。空中でボールを受けて、着地と同時に身体を反転させてシュートするなんて動作の際に、膝には大きな回転モーメントが加わります。
 靴の性能がよくなり、トップスピードからのストップが容易にできるようになったと聞きます。ここで足の裏の全体に体重がかかってロックされてしまうと、足先の向く方向と、膝の向く方向が違ってしまい、膝をひねるということになります。

 力士はあれだけの体重があるのに、相撲では、意外なことに、それほど膝を傷めません。あるとき、土俵で相撲の稽古をしたことがあり、その秘密に気付きました。土俵の上には、砂が敷かれていて、その砂で、足が滑るのです。もしこれが、バスケットシューズをはいて、体育館の床の上で相撲をとったとしたら、膝には大きなストレスがかかることでしょう。

 膝をひねらないための、動きのトレーニングです。
足を肩幅の広さに開いて立ち、かかとを浮かせます。足の親指を軸にして、その場で腰を左右にひねります。ダンスで言う、ツイストの動きです。膝と足の方向が、常に一体になるように注意します。これを練習の前などに、30~50回やってみてください。

 外力によるものは、ある意味、仕方のないことです。しかし、自分の動きの中で膝をひねってしまうのは、動きの訓練をすることによって、予防できるのではないかと思います。

参考文献「新版 図解・スポーツリハビリテーション」

 

 熱中症が発生しやすいのは、一番気温の高くなる、真夏の時期だけではありません。梅雨の晴れ間に、突然気温が上がったようなときや、梅雨明けの蒸し暑い日などにも起こります。
その対策としては、この時期のスポーツ、トレーニングでは、最初から飛ばさず、暑さに慣れてから、本格的なトレーニングに入るようにしてください。熱に対する順応ができるまでには、4〜5日かかるとされています。
 予防として重要なのは、何といっても「水分の適切な補給」ということになります。「のどが渇いた」と感じるころは、すでに脱水に陥っている状態なのです。
 炎天下、高温下での運動の場合、発汗量は1時間あたり1〜2リットルになることもあるので、練習前に250から500mlの水分を補給するようにします。練習中は、個人のボトルを持ち、休憩中に自由に飲めるようにします。そして運動中は、約30分ごとに50〜100mlずつ、水分を補給するようにします。
 補給する水分の内容は、塩分0.1〜0.2%、糖分2.5%程度で、市販のスポーツドリンクを2倍程度に薄めたものがいいでしょう。
 また夜間には、通常でも200〜300mlの汗をかいています。夏場などの寝苦しい夜には、500mlから、ときには1リットル近くの汗をかいてしまうこともあります。朝の涼しい時間帯だからといっても、起きてすぐのトレーニングには要注意です。

参考文献 山海堂「現場で使えるスポーツ救急マニュアル」

 

 
 ケガをしたスポーツ選手、スポーツ障害を持つスポーツ選手を診る場合、その状態から、いかに治癒に向かわせるかはもちろん、いかにしてその後の後遺症を最低限に抑えるか、再発をいかに予防するかを、われわれは考えなければいけません。
 その際に、ただ「休みなさい」とか、「止めなさい」と言ってしまえば、話は簡単です。スポーツを止めてしまえば、その後に障害が進行することはありません。また「やってはいけません」と制止しておくことは、医師の責任回避にもつながります。医師の制止があったにもかかわらず、選手が練習を続けて症状が悪化した場合には、それは選手の責任になってしまうからです。
 しかし、選手は決してそれを望んではいません。それだけでは、選手はますます医療現場から離れていってしまうでしょう。
 選手が求めているのは、どうしたらスポーツを続けられるか、いかにしてスポーツを続けながら治していけるということです。
さまざまなスポーツの競技特性を理解し、また選手本人の動きの癖や心理面なども理解した上で、たとえば「この技なら、ケガをした部分に負担がかからないから、この技を使うように」とか、「この練習はまだダメだけど、この練習ならやっていいよ」などと言ってあげることが、スポーツドクターと呼ばれるわれわれの役目だと思っています。
 ケガに悩むアスリートのみなさま、一番いい方方を、一緒に考えていきましょう。